草創期の頃の思い出

草創期の頃の思い出

(掲載日:2015年04月12日)

服部祥子
大阪人間科学大学名誉教授・頌栄短期大学学長

 

 大阪人間科学大学健康心理学科が創設されて10年目の年を迎えられたのですね。草創期に関わった者として、感無量の思いです。

 思えば薫英学園が創立70周年を記念して大阪人間科学大学を設立したのは2001年のことでした。私はその前年、大学設置のための準備室に赴任しており、今は亡き扇谷尚先生(初代学長)とともに大学作りの構想をいろいろ練ったものです。丁度20世紀が終り新しい世紀が幕を開けようとする時で、激動する社会に対応する人間の在り方を問い直すと言う雄大な課題をかかげ、「人間科学」という総合的学際的な学問的指向性を特色とする大学をぜひ設置したいという熱い思いを抱いて大学の理念や概念図を懸命に模索したことを懐かしく思い起こします。結局人間科学部の中に人間環境学科と社会福祉学科を設け、一学部二学科の編成で大阪人間科学大学はスタートしたのでした。その際最も大切にしたことは二学科に共通する柱としての「共生」という理念でした。つまり人間環境学科は「自然・社会・文化と人間の共生」、社会福祉学科は「人間と人間の共生」をそれぞれ中核のテーマとして教育・研究を充実させようとしました。

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 こうして歩み始めた大阪人間科学大学でしたが、一期生が卒業する頃、既成の二学科に加えて心理学科創設への期待、要望が高まってきました。その背景にはまず既成の二学科の「共生」の理念の他に、「自己と他者の共生」、また「自己の内面と外面の共生」という重要な側面、とくに心理学的アプローチによる学問的追求が必須という方向性が強くなりました。さらに大学にはすでに各領野の優秀な心理学者が教員として配属しておられましたので、そのことも心理学科創設への道を加速させました。そして熟考の末、現代を生きるすべての人にとって最も重要なテーマである「健康」を柱とし、健康で活力に満ちた「共生」の世界を創出するための理念と技術の結集を学問的に追い求めようと、「健康心理学科」と名づけられた新しい学科が2005年4月に産声をあげました。その時新しい船に乗り合わせた教員の皆様お一人お一人を今懐かしく思い起こしています。

 生理心理学、ストレスマネージメントの分野で日本有数の学者である明朗闊達、スピード感あふれる山田冨美雄先生、教育心理学、発達心理学の雄で暖かさと優しさの人藤村邦博先生、社会心理学、教育心理学の若きエースで一寸シャイなお人柄の箱井英寿先生、特殊教育、行動療法の実践を多く積まれた谷晋二先生。

 当時山田、藤村両先生は50代の初め、箱井・谷両先生は40代の若さでした。更に30代、20代の新進気鋭の心理学者たち、百々尚美先生、北村琴美先生、荒井弘和先生・・・・皆生気あふれる雰囲気でした。

 そこに文化人類学の杉本尚次先生、哲学の稲葉稔先生という重厚な長老教授や英語指導のみならず海外研修にも尽力くださった平柳行雄先生も加わり、真に活気のある学科としての旅立ちでした。そしてその後も続々と馳せ参じて下さった先生方の大きなお力も頂き、健康心理学科は10年間の歩みを成し遂げられたのでした。

 草創期にかかわりながら今は他学に籍を移していますが、大阪人間科学大学健康心理学科はいつまでも懐かしいところです。ご一緒させて頂いた方々を万感の思いを込めて思い出しつつ、これから先20周年、30周年に向けて元気に歩いて行かれますことを祈っています。

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